未完成のW3C仕様を再ライセンス
W3Cが仕様の作業を中止することがありますが,コミュニティの一部ではその作業を継続したいと考えることがあります.この文書では,W3Cが未完成の仕様を再ライセンスする方法について説明します.
状況:この方針は,会員による2回のレビューを経て2014年12月5日に施行されました.詳しくは W3Cの方針と法的情報をご覧ください.
ユースケースの例 __anchor
- ワーキンググループが Foo 勧告を策定するためにチャーターされていたが,多くの投資の後,たとえばその作業をチャーターに含め続ける関心が不十分であると判断して,仕様の作業を中止する決定をすることがある.しかし,ワーキンググループの一部の参加者は,W3Cコミュニティグループなどでこのアプローチの作業を完了させたいと考えているかもしれない.
- ワーキンググループが終了間近であり,W3Cはその仕様を他のワーキンググループで継続開発する計画がない.開発中のドラフトの利用者が,作業を継続できるようにしたいと考えている.
注:この文書は,放棄された未完成の仕様の再ライセンスを申請する手続きに関するものです.これは他の種類の仕様の再ライセンス手続きや,W3C文書ライセンスに対する広範な変更の議論を妨げるものではありません.
対象となる仕様と対象外の仕様 __anchor
この方針の下で再ライセンスできる仕様は限られています.
対象となる仕様
作業草案(Working Draft),勧告候補(Candidate Recommendation),および勧告案(Proposed [Edited] Recommendation)のうち,次のいずれかを満たすもの:
- 勧告に進むことを目的にワーキンググループがチャーターされていたが,勧告として公開される前に作業を中止する合意決定を行った,または
- 仕様が勧告として公開される前にワーキンググループが終了した
すでにW3C勧告として公開されたことのある資料は再ライセンスの対象にはなりません.
対象外の仕様
以下の対象外条件は,対象条件より優先されます:
- W3C勧告
- W3C勧告の一部が後続の仕様に含まれている場合(例:改訂版の勧告)
- W3Cが,その仕様を別のワーキンググループで引き継ぐ計画を発表している場合(例:提案チャーターや会員への事前通知)
- 特許ライセンス上の懸念により放棄された仕様
再ライセンスの申請 __anchor
チームは,対象仕様の再ライセンス提案に関してW3C会員レビューの開始を担当します(下記の手順に従う).
誰でもチームにレビュー開始を要請することができます.通常はワーキンググループ,主要な貢献者,または作業継続を希望する組織からの申請です.
完全な申請には以下が必要です:
- 再ライセンスを希望する対象仕様の特定
- 再ライセンスしたい部分または仕様全体の明示
- 再ライセンスの理由
- ワーキンググループによる申請決定の有無(あれば記録へのリンク)
チームは,対象外の仕様や不完全な申請に対しては通常レビューを開始しません.
ワーキンググループの意見 __anchor
チームは,提案を会員に送る前に,担当するワーキンググループの意見を考慮します.
放棄された作業の再ライセンスに関するワーキンググループの合意の評価
ワーキンググループが現存し,そのグループが再ライセンスの申請を行っていない場合,チームはそのワーキンググループに対し,再ライセンス申請を支持する合意があるかを確認する要請を送ります.議長は通常4週間以内に回答する必要があります.
過去の編集者
現在および過去のワーキンググループに関して,チームは誠意をもって,仕様の再ライセンス意図を過去の編集者に通知するよう努めます.
ACレビューおよび公開通知 __anchor
諮問委員会による正式なレビュー __anchor
チームは,対象仕様の再ライセンス提案について,諮問委員会にレビュー要請を送らなければなりません.レビュー要請には以下を含める必要があります:
- 再ライセンスされる正確な仕様(またはその仕様の正確な部分)の特定
- 再ライセンスを要請した関係者と,元の申請に含まれていた再ライセンスの理由
- 提案に対するワーキンググループの支持レベル(合意,異議,または4週間以内に返答なし)
- 提案されている再公開用のライセンス
- 会員および一般からのフィードバックの提出方法
レビュー期間は少なくとも4週間とします.
公開通知 __anchor
チームは,public-review-announce@w3.org およびW3Cのホームページ上で通知を行います.
決定と不服申立て __anchor
決定
チームは,仕様を再ライセンスするか否かの決定を諮問委員会および一般に対して発表しなければなりません.
チームが再ライセンスしないと判断した場合は,その理由を示す必要があります.その理由には,レビューの過程で明らかになる以下のような事項が含まれる場合があります(このため,これらは「対象外仕様」セクションではなくこの箇所に記載されています):
- 仕様はまだW3C勧告ではないが広く導入されており,再ライセンスにより分裂のリスクが高まる可能性がある
- 寛容なライセンスの下で仕様を公開することで有害な技術が広まる可能性がある
- チームが,その仕様の作業を中止すべきでないと判断した場合
この方針の下で仕様を再ライセンスする提案に対して,諮問委員会による支持の最低基準は設けられていません.
不服申立て
チームが再ライセンスしないと決定した場合,諮問委員会はその決定に対して不服申立てを行うことができます.チームが再ライセンスする決定を行った場合は,正式な異議申立て(Formal Objection)があった場合に限り不服申立てを行うことができます.いずれの場合も,W3Cは AC不服申立て手続き に従います.
公開 __anchor
W3Cの決定 に基づいて再ライセンスされる場合:
- 不服申立ての可能性がある間は,公開を行ってはなりません(不服申立ての期限については AC不服申立て手続き を参照).
- 仕様がW3Cノートでない場合は,新しいライセンスの下でW3Cノートとして公開されます.すでにノートである場合は,そのノートが新しいライセンスで更新されます.
- 仕様の一部のみが再ライセンスの対象であった場合は,その部分を新しいライセンスの下でノートとして公開します.
- W3Cのウェブマスターが,当該仕様シリーズの「最新版URI」を再ライセンスされたバージョンに更新します.
推奨される著作権ライセンス __anchor
チームが推奨するライセンスは W3Cソフトウェアおよび文書ライセンスです.
仕様の一部が元々W3Cソフトウェアライセンスの下で公開されていた場合は,再ライセンス後もそのライセンスを継続すべきです.
特許ライセンス __anchor
W3C特許ポリシーに基づく特許ライセンスの義務は,W3C勧告にのみ適用されます.したがって,本方針に基づき再ライセンスされた仕様は勧告ではないため,本ポリシーにより新たなライセンス義務が発生することはありません.
注記:
2015年5月21日,チームおよび PSIG による推奨に基づき,W3Cソフトウェアおよび文書ライセンスをディレクターの推奨ライセンスとして明記しました.